研究概要 |
学会で発表した論文"Environmental matching agreements among asymmetdc countries"は昨年度(平成21年度)の発表論文と同タイトルであり,基本的に内容は同一であるが,モデルでおかれていた不自然な仮定をなくすという改訂が加えられている.現在この論文を学術雑誌に投稿中である 今年度の研究成果はディスカッションペーパーとして刊行した論文"Realization of a self-enforcing international environmental agreement by matching schemes"に集約されている.論文の内容を以下に述べる.研究代表者自身の研究も含め,既存の研究ではすべての国が無条件でマッチング・ルールを受け入れることを仮定している.しかしマッチングを否定し協定自体に参加しない国が出現する可能性を検討することも重要であるため,本論文ではゲームの最初(第1段階)に各国が協定に加盟するかどうかを決定するという仮定をおく.そして第2段階で加盟国が話し合いによってマッチング率を定め,さらに第3段階ですべての国が汚染の基準削減量を非協力的に定める.この設定のもとで対称な国をプレイヤーとするゲームの分析を行った結果,第1段階での均衡が「すべての国が協定に参加」となる,つまりすべての国からなるマッチング協定が自己拘束的であることが示される.その理由は,ある国が単独でマッチング協定を離脱しても,それに応じて残りの国からなる協定が決定するマッチング率の値は1より小さくなり,結果的に離脱した国の利得が減少することである.さらに均衡の結果として効率的かつ衡平な協定が導かれる.本論文の貢献は,これまで得られなかった自己拘束的な協定のスキームを明確に示した点と,マッチングにコミットしない国の存在を許容し,加盟国,非加盟国間の行動の相互依存性を分析することによって既存の研究を拡張した点である
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