研究概要 |
平成21年度は,わが国の鉄道事業における生産性や効率性を計測した先行研究をサーベイし,公営地下鉄の生産性や効率性を計測するために必要なデータの収集と整理を行った後,生産性と効率性の計測を行った.公営地下鉄では経営計画により経営の効率化・健全化が行われており,この経営計画の生産性と効率性への影響を調べるために,公営地下鉄のマルムクイスト生産性指数の計測を行った.マルムクイスト生産性指数は生産フロンティアのシフトおよび技術効率性の変化に分解することができるため,あわせてこれらの計測も行った.それによると,計測期間中においては,マルムクイスト生産性指数が上昇傾向にある事業者,下落傾向にある事業者.上下しているか,あまり変化がない事業者がほぼ同数となった.生産性指数を分解したところ,効率性の変化は大きく変化するようなことはなく,生産フロンティアの変化は生産性指数と同じ計測結果を示した.したがって,生産性の変化は主として生産フロンティアのシフトによるものであることがわかった.また,観測期間中の経常損益はよくなる方向に向かいつっあるが,今回計測された技術効率性と経常損益を比較したところ,技術効率性がよいからといって,経常損益もよいとは限らないという傾向が見られた.以上から経営計画による経営の効率化・健全化と技術効率性の変化や生産性の変化との明確な関係を見出すことはできなかった,他の要因を考慮していない点はあるものの,経営の健全化・効率化を考える上で,この結果は重要な示唆を与えるものと考えられる.
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