研究概要 |
平成23年度においては,まず前年度に課題として残されていた長期の一般化費用関数の推定を行った.この研究では,資本が資本以外の生産要素と比較して過剰に使用されているかどうかを分析するために,事業者の直面している資本価格で費用を最小化していないという仮定のもとに推定を行っている.ここでの過剰という意味は費用最小化したときの量と比べたときのものである.一般化費用関数の推定結果によれば,規模の大きな事業者で資本を資本以外の生産要素と比較して過少に使用していること,反対に規模の小さな事業者では過剰に使用していることが示された.そして,そのために発生している配分非効率性は,平均で8%程度になることがわかった.また,同時に技術非効率性と規模の経済性の計測も行った.技術非効率性は平均で30%程度発生していること,規模の経済性は大都市を除いて存在していることが示された.この研究では,配分非効率性と比較して大きな技術非効率性が発生していることを示しているが,その点に公営地下鉄の経営を考えるポイントがあることを示唆している.次に公営地下鉄の相対的な経営効率を見るために,公営地下鉄と大手私鉄の効率性の比較を行った.この研究では,資本を固定的生産要素として,確率的フロンティア費用関数によって得られる費用非効率性が公営と民営という経営形態によって異なるかどうかを分析している.その結果,地下鉄という事業の特性を考慮した場合には,費用非効率性には差がないとことが示された.この原因としては,費用として可変費用のみを考えていることと,インセンティブ規制であるヤードスティック規制が導入されたこと,経営改革が進められていることが考えられる.公営地下鉄の費用効率性が大手私鉄と異ならないということを示したことは,今後の公営地下鉄の経営を考えるうえで参考になるであろう.
|