平成22年度は、国際的な電子機器の生産ネットワークの広がりと構造変化に注目しつつ、主として日本の輸出入関数の推計を行った。2008年後半から2009年初頭にかけて世界的に貿易額が急減したが、日本の輸出の落ち込みは諸外国と比較しても大きかった。また、日本では輸入もかつて経験したことのない大きな落ち込みを経験した。この時期には同時に円高が進行しており、輸出の減少の一部が日本企業の価格競争力の低下によるものだった可能性が考えられるが、その数量的な効果は十分に把握されていない。また、輸入の減少は輸出の落ち込みによる内需減少の影響だと考えられているが、それだけで十分に説明できるか否かは明らかでなく、また、円高による価格効果が働かなかったのか、働かなかったとしたらなぜなのかも明らかにされていない。 平成21年度中の研究によって電子機器の国際市況が日本のマクロ輸出入数量や円の為替レート、近隣諸国の景気循環に影響を与えていることが示唆されたため、これらの要素を考慮して輸出入関数の定式化を行い、短期の所得・価格弾力性の推定に力点を置いた推計を試みた。輸出関数の推計結果と輸入関数に関する推計結果を別個にとりまとめ、それぞれに関して和文と英文で論文を執筆した。輸出関数の和文論文は11に掲げたものである。輸入関数に関する和文論文は平成23年度に公表予定である。英文論文は査読中、研究代表者のホームページにおいてワークング・ペーパー版を公開している(http://www.econ.osaka-cu.ac.jp/~Kumakura/index.html)。
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