研究概要 |
本研究の目的は,世帯構成の動態変化にともなう住宅需要への影響や資産税制ならびに土地利用規制などによる住宅供給への影響に着目しながら,首都圏における住宅市場のダイナミクスについて理論的・実証的な分析を行うことである。2010年初頭内閣府プロジェクト『バブル・デフレ期の日本経済と経済政策』の一環として慶応義塾大学出版会から出版された『財政政策と社会保障』所収の「資産税制とバブル」をさらに発展させることを目指している。当初予定した内容は,第1章コミュニティの属性と住宅需要,第2章土地利用規制と資産税制,第3章住宅市場とバブル,第4章VARによる効率性の検証,第5章シミュレーションによる都市住宅市場の動学分析,第6章ヘドニック分析による投資的要因の検証,第7章住宅供給の価格弾力性の推計とその要因,以上7つの章であった。しかし研究を進めていくなかで,骨格そのものは変わらないものの,いくつかの修正が行われようとしている。第5章では住宅需要の動学的な側面を扱うこととし,清水を中心に分析が進められている。また,第5章で扱うこととされたシミュレーション分析については,それに替わって住宅市場が経済厚生に及ぼす動学的な影響について理論的かつ実証的な研究も加える方向で研究が進んでいる。具体的には,第8章では土地利用規制とりわけ都市税制が経済厚生に及ぼす効果について理論的な分析が,また第9章ではDSGEを住宅市場に応用して住宅価格の変動が経済厚生に及ぼす影響について実証的な分析が進められている。なお,前者については中神が,また後者については井上が主として担当している。
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