研究概要 |
本研究の目的は,世帯構成の動態変化にともなう住宅需要への影響や資産税制ならびに土地利用規制などによる住宅供給への影響に着目しながら,首都圏における住宅市場のダイナミクスについて理論的・実証的な分析を行うことである。3年目に入り研究を進めていくうえで若干の変更を迫られた。その大きな理由として首都圏における住宅市場の動学的な分析を行うためにはより空間的な要素を強調する必要があると感じたからである。プロジェクトの前半は住宅市場のファイナンス的な側面を軸に分析を進めていたが,マクロ経済のなかの住宅市場分析と首都圏という空間的な住宅市場分析との違いを多少なりとも際立たせる必要がある,そうでなければ本プロジェクトの意義が薄れてしまうのではないかと考えたのである。そこで,第1章(コミュニティの属性と住宅需要),第2章(土地利用規制と資産税制),第3章(住宅市場とバブル)で予定されていた内容についてはひとつの章に整理し,新たに第2章で住宅価格の動きを評価する指標である使用者費用と価格家賃比率について考察し,第3章において住宅市場におけるリスクの問題を取り上げ,とくに空間的なリスクがもたらす価格への影響について考察を加えた。いずれも首都圏における空間的な住宅市場の動学分析を行ううえで大切な内容を含むものである。その変更を受けて,当初予定されていた第5章については空間的な住宅市場の分析を行うには無理があるとの理由から削除し,第4章では第1章から第3章までの基礎理論をベースとしたデータによる記述的統計による分析を行う。第5章GVARによる効率性の検証,第6章ヘドニック分析による投資的要因の検証,第7章住宅供給の価格弾力性の推計とその要因,第8章土地利用規制とりわけ都市税制が経済厚生に及ぼす効果,第9章ではDSGEを住宅市場に応用して住宅価格の変動が経済厚生に及ぼす影響について実証的な分析が行われる。
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