研究概要 |
本研究の目的は,中国の地域開発政策が地域格差縮小にどれだけ貢献できたかを,労働を考慮した地域間産業連関モデルによって計測することにある。 平成22年度は,8月に現地調査(上海)と3月に現地調査(大連、武漢、上海)を実施した。8月には上海復旦大学において地域開発政策と格差に関する分析手法について意見交換した。藩剣勇教授(上海復旦大学)からは、製造業集積拠点の中小都市において沿海地域では土地がなくなってきたこと、内陸部では中小都市に開発区として企業を誘致する土地があるために製造業集積の構造が変化してきていることが紹介された。3月の現地調査では、東北振興では資源枯渇型都市、旧工業都市の再工業化がテーマになっていること、中部崛起では武漢都市圏のように都市による空間的な地域開発の牽引が期待されていることがわかった。 上記のような中国の地域開発政策をフォローするとともに、地域間産業連関モデルを構築した。現時点では2007年を対象にして1部門31省で推計を行った。地域間交易の推計では、確率変数を用いて推計するもの、グラビティモデルから距離のべき乗関数として推計する方法などを用いて試作した。その成果については2010年12月に応用地域学会で報告するとともに,いただいたコメントを元に同学会誌に投稿している。 最終年度である今年度は,モデル推計の精度を高めるとともに,開発戦略の数量化及びその地域格差に関する貢献度などハーシュマンの浸透・分極効果という観点から実証分析に取り組むことになる。
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