グローバル下の地域経済活性化の視点から、労働移動、貿易自由化と金融・資本市場整備の課題を研究した。これまでの研究をまとめるため、特に、雇用と所得に対するグローバル化の効果を分析するとともに、地域発のグローバル化の必要性を考察した。すなわち、市民、家計、コミュニティビジネスを主役とする共助社会とそれを支える金融システム構築の可能性について債券市場を中心に考察した。 後藤は、外国人労働の型に着目して、移民と出稼ぎ労働者を峻別することで、モデルを厳密化した。そして、移民の受入れはプラスの経済効果を、その反対に出稼ぎ労働者の受入れはマイナスの効果を生みがちであるとの結論を導いた。また、外国人労働が日系人労働者も含めて、出稼ぎ労働的な色彩を強めていることから、労働生産性の向上、女性・高齢者・若年者などの国内労働者の雇用促進、貿易自由化・資本移動の自由化のさらなる進展が効果的であり、また必要であることを提案した。 岸のもともとの研究目的は、後藤の研究を金融面から補完することによって、総合的な研究に繋げることにあるが、クロスボーダーな債券市場と東アジア諸国の地域金融とをリンクする手段として、マイクロファイナンス、住民参加型ミニ地方公募債、コミュニティ・ファンドが有効であると提案した。そのため、家計、ベンチャービジネス、ソーシャルビジネス、NPO・NGO、地域金融機関の行動を考察した。 これらの研究過程において、岸は、高齢者の資産構成を土台にした論文を中央大学企業研究所叢書において、またアジア諸国や米国の協同組織金融機関を参考にして、地域金融機関の果す役割を、同大学経済研究所叢書において発表した。さらに、後藤はInter-American Development Bank(IDB)において、労働移動の型を厳密化したモデルに基づく高齢化社会の労働力不足に関し報告した。
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