本研究の目的は、市場参加者がヘテロジーニアスな期待を持つという仮定のもとで、韓国の為替レート動きを説明する「ヘテロジーニアスな期待モデル」を構築、検証することである。 研究の第一段階として、韓国の為替レート統計を調査・検討した。アジアの他の国の為替レート統計と比較してみたら、韓国の為替レートの変動性が非常に高い事が発見された。為替レートと貿易収支との関係を検討したら、既存の論文で報告されたJ-curveとS-curve効果が弱くなる傾向が示された。韓国のウォン、中国の元、ユーロ、米国のドルと日本の円の間のJ-curveとS-curveを比較した結果、韓国のウォンの特異性がまた示された。 本年度8月に訪問教授として韓国のAJU大学に滞在し、韓国内で行われた関連する研究のサーベイを行った。また関連研究所・機関を訪問し、当領域の韓国人専門家と「ヘテロジーニアスな期待の仮定によって、韓国の為替レート変動の特性と特異性が説明される可能性」について議論を行った。 De Grauwe(2006)のモデルに基づいて、ヘテロジーニアスな期待を仮定した韓国の為替レートのモデルの基礎を構築して、モデルのパフォーマンスを検討している。福島大学の大野教授とUniversity of Michigan-Ann ArborのTesar教授の意見をきいて、中央銀行のInterventionとStructural breakもモデルに入れる方法を検討している。 韓国に対しての日本のJ-curveとS-curveの特異性はTCER-working paper(Revisiting J-curve for Japan)に報告された。
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