| 研究概要 |
本研究では、日本の製造業における労働市場での不完全競争の程度と企業のマージン(Price-cost margin)の関係を実証的に分析することを目的としている。特に、産業セクター間でのマークアップ(Markups)の相違やそれがビジネスサイクルに伴いどのように変化するのかに着目して分析を行う。当該年度においては、文献レビュー、データセットの構築と実証モデルの導出に注力した。まず、産業組織論や労働経済学など関連分野の研究文献を中心にレビューした上で、海外の事例も参考にしつつ、日本における産業組織及び労使関係の特徴を体系的に調査した。次に、個別企業の労働、資本や利益などのデータセットの構築を試みた。具体的には、国際大学にてアクセス可能なNEEDS-FINANCIALQUESTなどの個別企業財務データベースから収集した。実証モデルの導出については、生産関数の推定や不完全競争下での労働市場や生産物市場の文献を参考にしつつ、複数の実証モデルの特定化を試みた。以上の予備的研究活動を踏まえて、日本企業が重要な役割を演じているDRAM産業において、learning-by-doing, knowledge spilloverや規模の経済の影響を考慮しつつ、市場支配力とプロダクト・ライフ・サイクルの動学的関係を実証研究した。当該研究結果を、論文"Dynamics of Market Power over Product Life Cycle : The Case of the DRAM Industry" (Kim, Yoshioka, and Kakinaka, mimeo)としてまとめた。
|
