研究概要 |
本研究の目的は,情報通信,都市ガス,電力等のネットワーク産業におけるインフラ整備を通じた市場構造の変遷に関する理論モデルを構築し,そのモデルを用いて均衡分析と経済厚生分析を行うことである.平成22年度は「ユニバーサル・サービス規制がネットワーク整備に与える効果」と「接続料金規制の有無と市場構造の変遷」の2つの課題研究を進めた. 「ユニバーサル・サービス規制がネットワーク整備に与える効果」の課題研究では,動学理論モデル分析により次の結果を得た.需要家間の公平性を目的として既存事業者に課されるユニバーサル・サービス規制は,(都市地域等の)高収益地域における新規参入企業のネットワーク整備を促進させる効果を持つが,逆に(地方地域等の)低収益地域における新規参入企業のネットワーク整備を遅延させる効果を持つ.その意味で,動学的視点からみると,ユニバーサル・サービス規制は需要家間の公平性を縮小させ,不公平性を増幅させる効果を持つ.また動学的な効率性を下落させる可能性も高いと言える. 「接続料金規制の有無と市場構造の変遷」の課題研究では,自らのネットワーク設備を所有するインフラ・ベース企業と所有しないサービス・ベース企業の各タイプの企業数の変遷を,規制の有無やスピルオーバー効果水準の各効果に焦点を当てて動学理論分析を行っている.現時点で数値例により企業利潤・消費者余剰・社会的余剰の変遷を調べ終えており,数カ月中に解析的な分析結果を得る予定である.
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