予定の研究課題に沿って2009年度に主に三つの問題について研究を行っていた。 ひとつは、先行研究サーベイを行い、貯蓄投資フロー、対外貿易フロー及び対外資金循環という三つの視座から国際資金循環分析の理論的枠組みを整理し、国際資金循環の計量モデルに関するバージョン・アップ作業を完成することができた。 もうひとつは、国際資金循環の分析モデルを使って1970年代の日本の対外資金循環と1990年代以来の中国の対外資金循環を比較し、その構造的変化を取り上げ、バブル経済の形成と崩壊における対外資金循環をめぐる諸経済変数の数量的な変化から日本の経験と中国への示唆を探ったものである。 また、2008年米国発の金融危機に関連し、国際資金循環の統計体系を使って国内金融取引と国際資本移動を結び付けて、中国の対外資金循環の変化と急増した外貨準備と米国との対外不均衡関係を分析し、米中間の対外不均衡と不安定な鏡像関係の形成要因とそのメカニズムを統計的に解明し、将来の展望に踏み込み、国際協調を含めた中国経済の構造調整をとるべき政策を提言している。
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