本課題の平成21年度における研究計画は、本課題において「経済的規制緩和と地域間格差」というテーマを取り扱うにあたり、対象となる郵便・鉄道・バス事業について、まずは費用、需要、サービス水準といった要因を個別に取り上げ、各要因存取り扱っている先行研究を収集・整理することであった。この作業は、「既存研究では、どのような手法を用い、どのような分析が行われてきたのか?」ということを明らかにすることにより、本課題において取り組まなくてはならない対象をより明確化するために必要なプロセスである。 本年度、浦西はバス事業の費用構造分析に関する先行研究の収集・整理を、毛海はバス事業のサービス評価および老齢者交通に関する先行研究の収集・整理を行った。文献調査の結果、既存研究では、主に(1)各国バス事業市場の構造の解説、(2)バス事業の費用構造、(3)集計データもしくは非集計データを用いた需要構造分析といった3分野が対象とされており、本課題のテーマのように、経済的規制の緩和が事業者の経営行動に与えた影響や、採算地域と不採算地域(または都市部と地方)におけるサービス水準の地域間格差を取り扱っているものは、今回調査した範囲において未だ見つかっておらず、十分な研究が蓄積されていないことが明らかとなった。 また、水谷は規制緩和の理論モデル構築に関連するものとして、規制産業や公的独占分野の効率性を判断する際の要因の一つである組織スラックの問題を取り扱った分析を行っている。
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