平成22年4月からアメリカのカリフォルニア大学バークレー校のスクール・オブ・パブリック・ヘルスに1年間留学する機会を得たので、平成21~23年度の科研費補助金の研究課題である「アメリカの高齢者包括ケア・プログラム(PACE)の意義と限界」の研究に集中して取り組むことができた。PACEの活動をアメリカ医療政策の歴史的展開の中に位置づけながらその意義と限界を明らかにした。またアメリカの地区保健センター(CHC)が患者全体に占める比率では僅か7%にすぎないものの、140万人もの高齢者に包括的プライマリケアや社会的ケアを提供しており、高齢者ケアの面から無視できない存在であることを知り、論文として発表した。平成22年2月にまとめたものを含めれば、この1年間に5本の論文を書き、そのうち2本を『社会科学論集』に発表した。即ち、(1)アメリカの長期ケアと高齢者包括ケア・プログラム(PACE)-オンロックの活動を中心に-(『社会科学論集』第130号)、(2)アメリカの地区保健センター(CHC)制度の盛衰と包括的プライマリケア(同第131・132号)、(3)日本における保健・医療・福祉の連携、(4)カナダにおける包括ケア活動、(5)スウェーデンの保健・医療・福祉の連携、がそれである。その上で、これら5本の論文に序章と終章を加え、「包括ケア(保健・医療・福祉の連携)の国際比較-医療の質と低医療費の両立-」というタイトルの原稿にまとめた。平成23年度中にこれを出版したいと考えている。
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