本研究は、職業安定所における生活困窮者への就労支援において「就労のための福祉」の位置づけが高まり、新たな施策が展開している実態を調査検討し、政策提言を行うことを目的としている。 2005年から始まった生活保護受給者のための就労支援プログラムは、児童扶養手当受給者、住宅手当受給者も対象とする「福祉から就労」事業に発展し、地方自治体とハローワークの間での協定に基づく支援が行われている。静岡県が2011年度から開始した「生活保護受給者等求職・職業訓練支援事業」の受託団体への調査を行ない、支援対象者が抱える生活課題を検討し、生活支援と就労意欲喚起などの「就労のための福祉」が重要な課題となっていること、寄り添い型支援が効果をあげていることを明らかにした。 2010年から「パーソナルサポート・モデルプロジェクト事業」が始まった。大阪府・豊中市、京都府、浜松市におけるPS事業への聞き取りを行い、伴走型の就労支援の重要な柱として、生活をめぐる問題の解決、メンタルヘルスをめぐる問題への支援が多様に展開していることを明らかにした。 さらに、2010年12月閣議決定「アクション・プラン-出先機関の原則廃止に向けて-」に基づく「雇用と福祉の一体的就労支援事業」の事例調査を行った(墨田区と東京労働局・墨田公共職業安定所、等)。「一体的実施」においても、寄り添い型支援「就労のための福祉」がポイントであることを確認した。 こうした調査をもとに、「就労のための福祉」の拡充に向け、公共職業安定所が果たすべき役割の大きさを明らかにした。そのうえで、公共職業安定所職員との意見交換を繰り返し、公共職業安定所サイドからの「求職者保障制度の創設」にむけた政策提言をまとめた。 なお、理論的な研究を進めるには、同様な課題に取り組んでいる外国との比較が有効である。2005年に大規模な制度改革を行ったドイツとの比較研究も進めた。
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