「市場」の最大の機能とは、社会に偏在する情報や知識を「価格」というシグナルで集約することであると伝統的経済学は教える。この市場の機能を、ITの力によって増幅させ、より積極的に活用しようと考えるものが、「未来の予測」を証券に見立てて売買をおこなう「予測市場(Prediction Market)」である。予測市場は、特に米国での活用が著しい。例えば、1988年より運用が始まったlowa Electronic Markets (IEM)は、そのシンボル的な存在である。本研究は、予測市場の活用を単純な未来事象の予測に限定せず、特に経済分野における意思決定問題に応用する方法について考察し、その将来性について議論している。 米国はおろか、日本国内にも多くの予測市場が存在する。したがって、予測市場の仕組み(ソフトウェアの基本的アルゴリズム)をよく知るためには、内外の予測市場に参加してみれば良い。ただし、第三者が設置した予測市場では、厳密にその取引や裁定の仕組みを理解することは難しい。さらに、予測市場の価格メカニズムに調整を加えることは、その市場の運営者でない限り、ほぼ不可能である。 こうした現状に鑑み、本研究では、自由な利用が可能な予測市場ソフトウェアの入手可能性を調査し、そのひとつ(Zocalo)を実際に国際化することを試みた。さらに、われわれがカスタマイズした、そのソフトウェアを、自由かつ無料で入手可能なかたちで再配布する準備をおこなっている。第三者によるソフトウェアの検証や結果の再現性をチェックするためにも、こうした再配布の自由を重視することの意味は大きい。
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