本年度は、昨年度に引き続き、小中規模の閉じたグループで、いかに面白いアイディアやイノベーションを生み出すことができるかという、企業内「アイディア市場」構築の研究をおこなった。アイディア市場とは、新製品・サービスのアイディアを証券にし、その売買をおこなうものである。証券の価格は、そのアイディアが成功するかどうかの確率的な指標となる。アイディア市場は厳密には二種類に分類することができる。一つ目は選好市場であり、二つ目はアイディア市場である。前者は、売買するアイディア証券を、何らかの方法で、いくつか事前に決めておくが、その一方、後者は市場の参加者にアイディアの自由な提出を求め、その売買をおこなう(以後、アイディア市場という言葉を使った場合は、この後者を指すことにする。)。なお、選好市場およびアイディア市場ともに、証券化されたアイディアのすべてが実際に遂行されるという保証がないため、事後的な結果を見て決済をおこなうという通常の予測市場の手法が取り難い。よって、この不都合を解消するために、どのような事後的決済方法が可能かを理論的に考える必要がある。ひとつの興味深い解決策は、同じアイディア市場を並列的に開設し、一方が他方の結果を予測させる方法である。なお最近の知見によると、通常の予測市場のように証券の最終価格を使っても、予測の精度は保たれることがわかっている。 さらに、こうした企業内予測市場を活性化するためには、被験者によるアイディアの創出を促すシステムが必要である。よって、本研究は組織内におけるソーシャルメディアの活用に注目した。具体的には、組織におけるマイクロブログによるアイディアのクラウドソーシングの事例をいくつか考察し、予測市場との接合方法について考察した。特に、マイクロブログ上に提案された多くのアイディアを効率的に集約し、証券化することが重要である。
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