本年度においては、2つの調査研究を実施した。1つは、「全国都市家庭ごみ有料化に関する調査」の結果に基づいて、有料化実施によるごみ減量効果、不法投棄の発生状況、ごみ処理経費の変化、合意形成のプロセスについて分析することであった。減量効果については、単純従量制を採用する70市からの有効回答データを分析した結果、可燃・不燃・粗大ごみは、40~45Lの大袋1枚の価格30~60円台の手数料設定をした都市群で翌年度16~17%、80円以上の手数料の都市群で37%の減量効果が得られ、5年目の年度においてもほとんどリバウンドが生じないのに対し、10~20円台の価格設定をする都市群については翌年度の減量効果が4%にとどまり、5年目の年度には2%の増量に転じたことを確認した。このことから、有料化の制度設計においては大袋1枚30円以上の価格設定が望ましいとの政策含意を引き出した。不法投棄については、有料化を導入しても必ずしも増加せず、増加した都市においても概ね2年以内で収束していることを把握できた。合意形成プロセスについては、都市規模に応じて審議会の設置や開催状況、市民参加の度合、説明会の開催回数などに大きな開差が生じるとの知見が得られた。有料化によるごみ減量に伴う処理経費の削減効果については、自治体のごみ処理事情(施設の状況、直営・委託収集の別、単独・広域処理の別など)により大きな差異が出ることになり、現段階での詳細な評価は困難であったが、収集運搬部門において経費削減効果が発現しやすいことを確認できた。もう1つの調査研究対象は、米国の有料化(PAYT)であった。米国環境保護庁やマサチューセッツ州環境局でヒアリングを実施することにより、これまで日本に知られることがなかったPAYTシステムを詳細に調査することができた。手数料収入を特別会計で運用し、地方公営企業のように独立採算制で運営するなど、その効率性、可視性には学ぶべき点が多い。
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