本研究は、EUにとって、EU域内労働移動およびEU労働市場の問題がますます重要になってきているという認識の下、「拡大」と近年の「金融ショック」がEU域内労働移動およびEU労働市場にどのような影響を与えるのかを4年間の研究期間において明らかにすることを目的としている。3年目である平成23年度は、新規加盟国からの労働市場アクセスを2006年から自由化した国々に焦点を当て、その経済的インパクト、社会的・政治的影響の大きさを明らかにしていくことを重点目標としていたが、交付を受けた金額とスケジュールの関係から、フィンランドとスペインの二国に絞って現地調査を行い、関係者から貴重な証言と資料を得た。また、昨年度3月に行った海外現地調査で得られた資料に加え、本年度もEUの関連法規及び政策文書、研究書、学術雑誌等を収集・整理する作業を行い、補完することによって「アイスランドの労働移動-EU第5次拡大と金融危機がもたらした影響を中心として-」という研究論文を執筆・公表した。 当論文は、まだEU加盟国ではないが、すでに人の移動の面ではEUとの間で自由化がなされているアイスランドを分析対象とし、EUの第5次拡大および近年の「金融ショック」によってアイスランドの労働市場と労働移動にどのような変化がもたらされたのか、また、そのような変化に対応してアイスランドの労働移動に関する制度がどのように調整されたのか、昨年度までに公表したスウェーデンおよびイギリスのケースとの比較において示すものである。
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