本年度は、まずは昨年実施した予備的調査の追加調査を実施した。そのうえで調査票を修正・完成させ、昨年度に作成したサンプルフレームを用いて抽出したサンプル企業へのベースライン調査(1回目)を実施した。およそ100社への訪問調査を行い、調査対象地であるベトナム・ホーチミン市のインフォーマル縫製企業および同産業の基礎的データを収集した。ただし農村-都市部の労働力移動の調査が限定的にしか実施できなかったため、その調査は今後行う予定である。 また、インフォーマル経済および東アジアの労働集約型工業化についての文献収集も引き続き行い、インフォーマル経済関連のプロジェクトを実施している国際労働機関(タイ、バンコク)等への資料収集及び聞き取り調査も実施した。その結果、中国やタイなど競合国で賃金上昇にともなった大掛かりな産業再編が起きていることが明らかとなった。こうした事態は、今後のベトナムのインフォーマル縫製産業にも強い影響を及ぼすものであると思われる。 今までの研究成果としては、まずは昨年度に投稿した2つの論文のうち一つ(グローバル・バリュー・チェーンおよびベトナムの労働集約型産業の高度化について、中国との関係で論じたもの)がいくつかの修正を経て査読を通り、国際学術誌に掲載決定となったことが挙げられる(掲載は2011年7月の予定)。もう一つの論文も査読の結果、修正のうえ再投稿し、現在再査読中である。さらに本年度も新たに1本の英語論文を作成、これも国際査読付き学術誌へ投稿中し、現在査読中である。
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