研究課題/領域番号 |
21530286
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
山本 盤男 九州産業大学, 経済学部, 教授 (30131733)
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キーワード | 経済政策 / 経済発展 / 税制改革 / 財・サービス税 / 連邦財政システム / 中央税収の州分与 / 財政赤字 |
研究概要 |
平成23年度の研究成果として、以下の知見が得られた。 1.2011-12年度のインドの経済は、グローバルな金融危機の影響を受け、GDP成長率が前年度の8.4%から6.9%に減速し、国内のインフレ圧力の抑制が主要な課題であった。財政収支は、直接税収の減少と補助金支出の増加のため財政赤字が2010-11年度決算のGDP比率4.9%から5.9%(修正概算)に、経常赤字が3.3%から4.4%に増加した。 2.2012-13年度の予算では、GDP成長率が7.6%±0.25%に増加し、財政赤字が5.1%、実効経常赤字が1.8%に低下すると見積もられており、財政赤字削減を規定する財政責任・予算管理法(FRBMA)の修正が提案された。実効経常赤字は新たに採用された概念であり、経常赤字から資本支出を控除したものである。 3.財・サービス税(Goods and Services Tax,GST)の導入は、2011年3月に導入に必要な憲法修正案が国会に提出されたが、審議中であり、2013年4月に延期された。中央と州政府間の主要な論点は、州政府が中央政府の提案するモデルGSTにより財政オートノミーと税収配分を失う懸念である。具体的な論点は、免除品目リスト、税率構造、免税点、州際取引課税、運用のためのGST協議会の設立と紛争解決手続きなどである。なお、税務執行のインフラとしてGSTネットワークの設立については合意された。 4.第13次財政委員会の勧告について、中央政府は、中央税収の州分与と州収入補助金については受け入れたが、財政整理工程表とモデルGSTと州の債務救済については実施を留保した。勧告の主要な特徴は、(1)中央税収の州分与率の引上げと州間配分基準の変更、(2)多様な部門別および州別の条件付き補助金、(3)中央と州政府の財政整理工程表、(4)モデルGSTの4点である。第13次財政委員会の勧告は、中央-州政府間の財源移転制度を断片化し、水平的配分定式を複雑にする結果となっており、連邦財政システムの改革という視点からは、現状維持を基本としており、改革の機会を失したと評価される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はおおむね順調に遂行できているが、主要な課題の1つである財・サービス税(GST)については、導入が当初予定の2010年4月から2013年4月に延期されため、導入による中央と州政府間の税収配分への効果を決算統計ではなく2013-14年度予算の統計等に基づき検証することにより、研究目的を達成する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、当初計画により遂行するが、本研究の成果をより有意義なものとするため、特に2012年8月に実施予定のインド(シンガポールを含む)の現地調査では、連邦及び州政府の財政政策及び税制改革の動向と導入されるGSTの課税メカニズム及び導入の遅れている理由について、インドの財政・税制専門家との意見交換による的確な情報と資料の収集に努める。
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