研究概要 |
山村の国際学術専門雑誌に掲載された関連研究の内容は次のようなものである。(1)社会資本が自然災害の被害をどの程度軽減するかを検証した。その結果、社会資本が大きい地域ほど、自然災害の経験をより有効に生かして災害の被害を小さくなることが分かった。この結果は各産業が復興するうえでSocial capitalが重要な役割を果たすことを示している。(2)日本の野球産業の需要特性を試合レベルのデータを利用して分析した。パリーグでは、先発投手が試合地が行われる球場が立地する地域の出身だと、入場者数が増加した。これに対してセリーグは先発投手の特性が入場者数には影響を与えていなかった。その理由は、パリーグが予告先発制度を採用しているために、Social capitalを通じた集客効果があったことにある。(3)社会関係資本が人的資本形成に与える可能性を検証した。検証結果は、社会的資本が大きいほど人的資本が蓄積されることを示していた。産業発展には十分な人的資本の蓄積がカギとなることが知られているが、検証結果はSocial capitalが人的資本蓄積を通して産業発展を促す経路が存在していることの傍証となっている。 加藤は昨年度取り組んだ理論研究を拡張して、既存製品と比べて廉価版の市場導入、さらには製品そのものを市場から徹底させるという、製品ライフサイクルの撤退期では典型的な現象をモデル化して分析を進めていった。そこでは,需要の不確実性,およびそれによって引き起こされる価格変動の大きさがライフサイクルに決定的な影響を与えるという知見を得た。これにより,Social capitalと価格変動の大きさとの関連を探ることが,産業ライフサイクルにおけるSocial capitalの機能を明らかにする鍵となることを確信するに至った。
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