共同研究者の山村はSocial capitalの形成要因について、実証分析を行い、産業発展の基礎的な条件を吟味した。具体的にはJapanese General Social Surveyから得られる個人レヴェルの情報を用いることにより、調査時点での居住地域での居住年数や近隣住民の特徴により、Socialcapitalの形成が促されることが示された。この効果は、本人の特徴からもたらされる効果よりも大きい。したがって、個人が置かれた生活環境がSocial capital形成に大きな役割を果たすことが分かった。これらの結果は、Journal of Socio-Econolnics、International Advances in Economic Researchなどの査読付き国際学術誌に発表された。これに加え、補足的に集計レヴェルでの分析を行ったところ、同様の結果が得られた。この結果はEconomics Bulletinに発表された。 主研究者の加藤は昨年度の研究を継続し、廉価版の市場導入と市場撤退の組み合わせで規定される製品ライフサイクルの理論分析に取り組んだ。特に今年度は、産業が複数の企業により構成される競争市場の製品ライフサイクルについて焦点を当てた。産業の特徴を表す外生変数の変化(需要の不確実性の大きさや品質劣化率)により、企業の分布、具体的には高品質製品や低品質製品(廉価版)を生産する企業の割合と市場から撤退する企業の割合、がどのような影響を受けるかについて、いくつかの知見を得た。これらの分析結果は、企業が撤退する頻度、また低価格の廉価版が広く普及するというコモディティ化の発生頻度が、産業ごとにどうして異なるかを説明している。したがって、産業ライフサイクル研究の核となる課題に、一定の解答を与える研究成果を導き出すことに成功したのである。
|