研究課題
これまでに研究代表者が収集した企業データと公開されている貿易データベースを利用して、マダガスカルで生じた政変とそれに伴う米国市場への優遇アクセスの停止が、縫製企業に与えた影響を検討した。変化の全体を俯瞰するために、当該年度は、産業全体の輸出額の変化、工業の閉鎖確率、工場の雇用者数の変化を分析の対象とした。政変と優遇アクセス中止の影響は、差の差(difference-in-difference)を利用して推定した。具体的には、政変が生じたマダガスカルの輸出額の変化をその他の輸出国を比較することによって、金融危機などすべての輸出国に共通するショックの影響を取り除いて、政変の影響を推定した。ただし、この手法は他国のデータがある貿易データにのみ適用できる。他方、優遇アクセス中止の影響は、米国市場でのみそれが実施されたことを利用して、米国向けに輸出していた企業と、その他の企業を比較することによって推定が可能である。企業・工場レベルの変化については、優遇アクセスの影響のみを分析した。分析の結果、輸出額については政変の影響は明確でなかったが、優遇アクセスの中止は、米国市場への輸出を80-85%減少させたことが分かった。また、優遇アクセス中止は米国に輸出する工場が閉鎖する確率を58%上昇させており、企業数の減少の主たる要因であった。雇用に対する影響は、工場の閉鎖によるものが主であった。閉鎖した工場では女性の雇用比率が高く、女性雇用の減少の90%は米国市場に輸出する企業が原因となっている。他方、優遇アクセス中止後も存続した企業には顕著な影響は見られなかった。これらの結果の一部を現地で開催したワークショップで発表し、産業団体、企業経営者、政府関係者などに発信した。ワークショップは新聞やテレビ番組でも取り上げられた。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Background Paper to Industrial Development Report 2013, United Nations Industrial Organization
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