研究概要 |
本年度は、前年度に引き続いて、非同質な3ヶ国間の様々な組み合わせによる租税の部分協調の維持可能性をもたらす条件の考察と、様々なパラメーター(各国の資本の保有分布や公共財への各国の選好)が維持可能性に対してどのような影響をもたらすかを調べた。さらに、同質である3ヶ国以上の国家間での資本税率に関する部分協調の可能性についても同様な分析を行った。後者の研究では、租税協調に参加する国の数が増加すると、維持可能が難しくなる一方、経済全体の国の数が増加すると、すなわち、租税協調に参加しない国の数が増加すると、維持可能が容易になることを示した。これらの結果は、EUなどのような経済ブロック内で租税協調の可能性に関する政策を理論的に評価する際に、きわめて有用な理論的指針を与えるものとして期待される。 これらの研究はすべて、前年度から研究の引き続きではあるが、どのような経済学的な理由でこのような結果が起きるかをさらに深く正確に考察して、国際的な専門誌に投稿するために十分な水準の論文を仕上げるために多くの時間を割いた。本年度は、その成果の一部が論文“Tax Rate Harmonization, Renegotiation and Asymmetric Tax Competition for Profits with Repeated Interaction”とまとめられて、Journal of Public Economic Theory (査読付き国際学術雑誌)に掲載が受諾された。まだ、すべての成果が論文にまとめられて、投稿する段階に至っていないが、深い経済的洞察を重ねた結果、十分な経済的内容と貢献を含んだ論文が完成すれば、本研究の予定研究期間の終了後であっても、今後とも査読付き国際学術雑誌への投稿を続けたい。
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