論文 標題「租税負担と受益に関する国民意識について」(約37000字) 税大ジャーナル14号(平成22年6月発刊)に掲載予定 (要旨) 租税負担と政府の公共サービスによる受益に関する国民意識についての研究は、有益性・有用性があるにもかかわらず、複数の学問分野にまたがること、また、客観的にとらえて論じることが難しいことなどから、これまで多くは行われて来なかった。本稿では、そのおおよその輪郭がわかるように、社会心理学など他の学問分野の研究結果を参考にしながら、全体的な関係性を素描し多角的に検討している。 本稿では、まず、財政収入と財政支出の関係の在り方を検討するための理論的枠組みとして、「量入制出」と「量出制入」の2つの概念を用いている。前者は、収入の額を計算し、それによって支出を計画するという意味であり、後者は、支出の額を先に計算した上でそれに必要な収入を確保するという意味である。それぞれの概念の前提条件を整理した上で、それらの概念のもとで租税負担等に関する国民意識が、一般論としてどうなるのかについて考察している。また、租税を社会共通の経費の分担であるとする考え方(会費説)に関する国民意識について考察している。更に、租税負担等に関する日本人の心の動きに着目し、社会心理学的アプローチ(個人主義的思考と集団主義的思考、社会的ジレンマ、沈黙の螺旋等)による考察も行なっている。 また、個別の税目のうち消費税を取り上げ、消費税が安定財源である理由が「給与」の取扱いにある点に着目し、給与所得者の消費税に対する意識について考察している。消費税と所得税の負担感、所得税の減税措置や納税者番号制度に対する国民意識についても考察している。 上記のような学際的研究を通じて、希望の持てる持続可能な社会の在り方について、更に議論を深めていくための材料を提供したいと考えている。
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