研究課題/領域番号 |
21530294
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
藤巻 一男 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20456346)
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キーワード | 租税負担 / 受益 / 納税者意識 / 社会心理学 / 消費税 / 付加価値税 / 所得税 / 番号制度 |
研究概要 |
日本人の納税者意識等に関して、平成21~22年度では先行研究等に基づき理論的に整理を行い、更に平成23年度ではネットリサーチによるアンケート調査(以下「本調査」という)に基づき実証的に分析を行った.そして、これらの研究成果を統合的に整理し、単著『日本人の納税者意識』としてまとめ、平成24年3月25日に刊行した。 本書の構成は、理論編として、第1章では日本人の納税者意識に関する諸説や歴史的経緯を踏まえた考察を行い、第2章では社会心理学的アプローチによる考察を行った。そして、実証編として、本調査の結果を踏まえ、第3章では人々の望む将来社会のイメージと租税負担意識について、また、第4章では消費税、所得税、法人税の各税に関する意識について、それぞれ年齢階級、性別、世帯収入、職業等と関連させながら分析した。 理論編の第1章では、「量入制出」と「量出制入」という2つの考え方と租税負担に対する国民意識との関係を整理した。実証編では、「量出制入」の枠組みにより分析結果を配列し論じている。租税負担に関する意識は、人々の望む将来社会のイメージや政治や行政に対する信頼感とも密接に関連していると考えられることから、第3章ではそれらの調査結果に基づいて考察した。そして、次の段階として、人々に受け入れられる社会を構築・維持するための財源をいかに確保するのか、すなわち、各税金の負担を国民がいかに分かち合うのかが問題となることから、第4章ではそれらの調査結果に基づいて考察した。 実証編では、各種分析により統計学的に有意なものを抽出した結果、特徴的なことが把握された。特に、年齢階級別分析では、リスクの社会化や租税負担を巡り、世代間の意識の違いが浮き彫りになったものがある。本書は、これらの分析結果をもとに、日本の目指すべき社会と税制の在り方を考える手がかりを探ることを意図している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アンケート調査の実施が東日本大震災の影響により大幅に遅れたが、ネットリサーチとデータ処理ソフトを活用することにより分析作業が円滑に進んだ。また、日本の社会や政治の現状を踏まえ、できるだけ早く研究成果をとりまとめて発表したいという意思が強く働いた。
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今後の研究の推進方策 |
消費税の税率引上げ、所得税の見直し、社会保障・税に関わる番号制度に関する人々の意識については、今後も継続的に観察していく必要がある。平成24年度においても、予算の範囲内でネットリサーチを実施したい。
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