本研究の2年目である平成22年度は、(1)前年度の研究成果を専門誌と学会で発表し、(2)それに対する指摘や助言を受けた修正や拡張を行うとともに、(3)米国の大規模な量的緩和(QE2)に関するデータの収集を行った。 まず、(1)の発表については、個々の投資家がTaylor[1993]型の政策反応関数を利用する際に生じる諸問題を議論した。また、Clarida等[1998]によるTaylor型反応関数の拡張をベースにして、これに金利の下限を考慮する再拡張を施した。さらに、円金利の長期時系列を用いて、これら拡張の効果とその利用上の問題点を実証的に検証した。その結果、当初の予想に合致する結果とともに、予想外の結果も幾つか得ることができた。 次に、(2)の修正と拡張については、ゼロ金利を想定した代替的なGMM推定を3種類行い、ある程度安定した結果を得るには、モデル選択に関する先験的な知見が必要である知見を得た。さらにヘックマンの方法によるモデル推定とEMアルゴリズムの適用の準備を進めた。これらの推定については、平成23年度も継続して行う予定である。 そして、(3)のデータ収集については、大規模な金融緩和に関する米国と日本のデータを収集し、主に米国のデータについて外れ値の有無の確認とその解釈を行った。
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