研究課題
サブプライム問題に端を発した金融危機により、世界経済の不透明性は一層深まっている。このような中、ポスト・ケインズ派のMinsky(1975)(1982)(1986)により提唱された金融不安定性仮説への関心が高まっている。本研究では、所得分配、金融資産、負債等の観点を考慮した閉鎖体系、開放体系の金融不安定性のマクロ動学モデルを構築し、金融危機(金融の不安定性、循環)を考察することを主たる目的としている。今年度は、「確信の不安定性」という概念を導入した閉鎖体系の金融不安定性のマクロ動学モデルを構築し、我が国において1990年代半ばから「確信の不安定性」が高まり、経済が不安定化した可能性があることをVARモデルを用いた実証分析において示した(二宮・得田(2011))。そして、それを開放経済に拡張し、韓国経済を対象に実証分析を行い、安定的な金融構造の重要性を強調した(Ninomiya and Tokuda(2012))。この他、Profit Sharingを考慮した論文の発展も行った(Ninomiya and Takami(2011))。さらに、3年間の研究期間における研究を総括し、新古典派、マルクス派等とも対比しつつ、今後のポスト・ケインズ派金融不安定性分析の射程と可能性を論じた論文を公表した。そして、その中で、研究の方向性、発展の可能性等を展望した。市場メカニズムを過度に過信した新自由主義的な新古典派、新しい古典派には、何がしかの問題点があったと考えられるが、ポスト・ケインズ派金融不安定性分析の枠組みの中で経済の供給面を重視すること、動学的な視点を持つSFCモデルと金融不安定性分析の融合の可能性等を強調した(二宮(2011))。
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http://www.biwako.shiga-u.ac.jp/sensei/k-nino/index.html