研究概要 |
本研究では、証券市場の情報効率性に関し、日本の株式の取引所取引における短時間の情報効率について、日中の取引データ(ティックデータ)を用いた検証を行うことを目的とする.本年度は初年度にあたり、まずデータの整備を行った.日本市場は価格の最小変動幅である呼値の刻みが米国市場に比べて粗く、上場企業が売買単位を選択でき、また取引所が発信する情報が時期によって異なるが、これら影響を取り除きサンプルを構築した。ついで主要な先行研究であるChordia,Roll,and Subrahmanyam(2005,2008,Journal of Financial Economics)の方法を踏襲し、まず注文不均衡情報は何分先の価格変化まで予測できるか、について分析した.価格変化および注文不均衡を計測する期間を5分、10分、15分、30分とし、非説明変数に売り気配・買い気配の平均である中値の変化率、説明変数に1期前の注文不均衡をとった回帰分析を行った結果、高流動性銘柄について、過去5分間の注文不均衡により将来5分間の中値の変化を予測できるが、過去15分間の注文不均衡から将来15分間の中値の変化を予想することは困難である、という結果を得た.これより、市場が情報効率的になるのに5分以上の時間がかかるが、15分はかからない、ということがわかった.次に、流動性をビッド・アスク・スプレッドにより計測したとき、注文不均衡情報の価格予測力が流動性からどのような影響をうけるかについて分析した.米国市場では、ビッド・アスク・スプレッドが狭い状況では注文不均衡により将来の価格変化を予測しにくい、という実証結果が得られているが、それとは異なり、日本市場では予測力はビッド・アスク・スプレッドの影響を受けていない、という結果が得た.これより、市場が情報効率的になるのに5分以上の時間がかかるが、15分はかからない、ということがわかった.次に、流動性をビッド・アスク・スプレッドにより計測したとき、注文不均衡情報の価格予測力が流動性からどのような影響を受けるかについて分析した.米国市場では、ビッド・アスク・スプレッドが狭い状況では注文不均衡により将来の価格変化を予測しにくい、という実証結果が得られているが、それとは異なり、日本市場では予測力はビッド・アスク・スプレッドの影響を受けていない、という結果が得られた、このような違いの一因は、両市場において採用している取引メカニズムの相違にあると考えられる.
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