平成22年度は、研究計画の2年目に当たる年度にあたり、以下の2つの成果を収めることができた。 第1は、昨年までに研究成果を『対外不均衡とマクロ経済:理論と実証』というタイトルで著作としてまとめることができたことである。本著作は、グローバル・インバランスの発生メカニズムを、貯蓄・投資バランスを視軸と多面的な角度から包括的に検証したものである。本著作における分析は、研究題目である「グローバル・リバランスと新たな国際政策協調のデザイン」を考察していくための礎をなすものであり、研究テーマを深く理解、検討していくための貴重な経験となった。本著作から得られるもっとも重要な知見は、対外不均衡という現象を理解するためには、構造的変動、循環的変動、その他変動という複眼的な視野に基づく、柔軟な分析スタンスが不可欠であるという点である。著作では、おもに日米両国の貯蓄、投資、経常収支の変動を、このような複数の視点に基づいて、定量的に検証している。このような検証は、グローバル・インバランスの調整=グローバル・リバランスの可能性を展望していく際、きわめて重要な情報を提供してくれる。 第2は、昨年7月より、本年3月まで米国ハーバード大学において在外研究の機会を得、研究テーマに関して様々な角度から情報収集を行うことができたことである。目下マクロ経済学の分野では、マクロ経済学・ミクロ経済学・ファイナンス論の各分野における壁がとけ、「Financial Macroeconomics」と呼ばれる新たな潮流が急速に発展しつつある。この潮流は、グローバル・インバランスという現象について、より深い理解を可能とするものであり、新たな分析枠組みを提供してくれる可能性が高い。在外研究期間は、こうしたマクロ経済学の新しい息吹を吸収する絶好の機会となり、今後の研究の発展に大いに役立つものと確信している。
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