平成21年度は、研究に必要なデータの購入と、それをもとにした実証用のデータセットの構築に務めた。当初は、研究対象となる日本企業が関わる買収、合併、ダイベストメント取引についてのデータセットを、公開情報をデータ入力作業によってファイル化することを検討していたが、科学研究費補助金とは別に、研究補助金の支給を受けられたことにより、市販されているデータセットを一括購入することが可能となり、予定していた作業時間を大幅に短縮することができた。定性的な情報を統計的に処理するためのコード化を概ね完了させて、証券価格データを利用して、買収、合併、ダイベストメントの意思決定が株主価値に与えた効果の測定を着手することができた。また予算にも余裕が生まれたことから、平成22年度に計画していた企業財務データの購入を前倒しして実施し、実証を行うためのデータセットの加工作業を開始した。 このように、平成21年度は、将来の研究成果を生み出すために必要な準備期間として位置づけ、本格的なデータセットの構築に注力したこともあって、公表することができた成果物は、学会における口頭発表が2件だけにとどまった。いずれも雑誌論文として投稿をして査読を受けられる水準にはなく、平成22年度以降に完成度を高める予定である。さらに、現時点で構築中のデータセットの完成を待って、とりわけこの10年余に著しい変貌を遂げた資本市場のもとで、各企業が行った買収、合併、ダイベストメントの意思決定に関する仮説の実証を行うとともに、国内外の企業を対象とした先行研究との対比などを進めていきたい。
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