平成23年度には、2003年から2009年までに実施されたM&Aならびにダイベストメントについて、日次の株式リターンデータを用いて累積異常収益率を測定し、その分布を統計的に調査・分析し、現状の把握を行った。あらかじめ有価証券報告書のデータを用いて作成してあったデータセットを利用して、取引に関係した企業の経営成績、財務状態、企業属性などをもとにサンプルを細分化して、累積異常収益率の分布にどのような違いが現れるかを確認した。また取締役会の構造を示すデータについて、各社の取締役個人の出身母体などの定性的な情報も手作業によって数値化を図り、オリジナリティの高い研究成果が得られるよう作業を行った。過年度より取り組んできた、取締役会の構造とM&Aとの間の関係において新しい発見が得られた。社外取締役を導入している企業が行うM&Aにおける累積異常収益率とそうでない企業のそれとを比較したもので、社外取締役を導入することが株主価値に対してプラスの効果を及ぼしていた事実が示唆された。因果関係の特定化、コントロールすべき要因の検討、モデルの精緻化などについて未解決の課題は多いが、研究成果を学会において報告する予定である。日本企業の社外取締役の特徴として挙げられるのが、親会社と子会社が同時に上場をしている場合の親会社出身の役員の存在であり、「研究の目的」の5番目に掲げた問題を明らかにするものである。1から4に掲げた点についても、研究に必要なデータの購入、統計的な実証を行うためのデータセットを構築するのに必要な作業は年度内に完了しており、順次、分析と検証を進めながら成果を学会等において発表する予定である。
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