研究概要 |
平成22年度の研究では、実証分析結果をワーキングペーパーとしてまとめ、成果の内容について学会報告を行った。平成21年度に作成した、株式取得比率データと、買収企業・ターゲット企業の財務データのマッチング・データを用いた実証分析の結果、アジア太平洋地域の自動車・部品メーカーがターゲットとして取得比率10%以上、株式を取得された場合、ディール完了後3年間、企業の収益性(ROA,ROE等)、成長性(MBR等)の改善傾向が統計的に検出された。国内企業同士の買収合併と国際企業買収のディール後3年間のパフォーマンスを比較した結果、後者のターゲット企業が有意に経営パフォーマンスを改善させている実証結果も併せて得られている。ただし、クロスボーダーM&Aによって買収企業、ターゲット企業双方が収益性を改善させるための要件として、同業種間M&Aであること、買収者の相対規模がターゲット企業に比べて大きいこと、買収者の企業価値(MBR等)が持続的に高いこと等も、実証的に示されている。また、クロスボーダーM&Aが数多く実施されるための条件として、平成22年度は(1)金融資本市場の発展度、(2)投資家保護法制の発展度、(3)金融資本市場の公平性・健全性指標を、スイス経営大学院(IMD)World Competitivenessの暦年データより作成し、上記の定量データとのマッチング作業を行った。分析の結果、これらの金融深化・公平性の指標は、クロスボーダーM&Aのディール数の伸びに有意に影響を与えていることが確認されている。これらの実証内容を、2010年6月末香港科技大学において開催されたAsiaFinanceAssociationにおいて報告を行った。
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