研究課題
研究の目的は、いくつかの公共サービスを対象として、それらのサービスの広域化による効率性の改善の有無(資源配分効果)と、その分配効果を、理論的また実証的に明らかにすることである。それらを分析するために、具体的に21年度には、第1に、研究分担者である中村は、政府間の財政的な外部性がもたらす非効率を理論的に解明するため、廃棄物処理政策と課税政策の関係を取り上げて、政府間の非協力的行動によって生ずる効率性の損失がどのような要因に依存するのかを検討した。その結果、非協力的行動による非効率は関係する政府や経済主体の数、公共支出の生産技術に依存することを明らかにした。その成果を富山大学・経済学部のワーキングペーパーとして刊行した。第2に、研究代表者の田平は、各種のサービス供給の性格の違いにより、地方団体の一人あたりの費用関数が異なってくる点に着目して、それを実証する方法を検討した。そして、公営企業年鑑などのデータを利用して実証研究を行う方法についての先駆的研究を調査した(筑波大学での資料収集など)。そして、水道事業についてのデータ入力を行った。各種のサービスについて考察している過程で、福祉関連サービスの内の生活保護費に関して、所得控除の意義・在り方を巡って課題があることがわかり、それについて『神戸商科大学80周年記念論文集』に執筆した。未だ研究の1年目であり、上に記した成果は目指す研究課題の中心部分でははないが、市町村合併により、あるいは他の事情により、サービス供給が広域化され、組織上の改変がなされた場合に、各種公共サービスの総費用および一人当たりの費用がどう変化するかを理論的・実証的に分析する必要があることについては論を待たない。費用関数を分析した従来の研究では、そのほとんどが効率側面のみを捉えた分析であり、また、市町村合併に伴う組織上の変化がもたらすサービスコストの変化、べおよび分配効果はあまり理論・実証的に分析されていないことを考えると、本研究はそれを補う意義がある点で重要であろう。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (2件)
神戸商科大学創立80周年記念論文集
ページ: 343-370
Working Paper(Faculty of Economics, Univercity of Toyama) No.250
ページ: 1-25