研究課題
平成23年度は、これまでの研究成果を基に経済産業研究所や財務総合政策研究所での研究会において、これまでの研究成果を基に政策提言を行ってきた。具体的には、アジア通貨については資本・為替取引規制の存在により取引コストが高いために米ドルが主に使用されているが、アジア間での貿易で米ドルが使用されていることにより、日本サイドではドル対円の、アジアサイドではドル対アジア通貨の為替リスクが存在していること、さらに昨今の米国の景気低迷を受けて日本企業にとって最終消費地としてアジアのシェアも近年高まっていることから、アジア通貨のエクスポージャーは年々増大していること、結果として将来的には米ドルに代わってアジアにおける独自の基軸通貨を創設するニーズも高まってくることが期待されることなどを指摘するとともに、アジア通貨単位を用いたサーベイランスの必要性に関する提言を行った。2011年末に行ったシンガポールの金融機関を対象としたヒアリング調査では、アジア諸国が日本円を貿易建値通貨として選択しない理由として日本円対アジア通貨の為替相場変動が激しすぎることが挙げられていること、取引時間はオーバーラップしていても決済上の問題があり、当日決済ができないなどの不備があることなどが明らかになった。今後アジア域内間の経済取引に円をはじめとするアジア域内通貨を利用するためには、アジア通貨間の為替相場安定に向けた域内為替協調政策と共に、アジア市場全体でReal Time Gross Settlementを構築する必要があることなどが確認された。これらの確認事項は、今後の研究計画として取り上げる予定である。
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Journal of Int'l Commerce, Economics and Policy
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