本年度の目標は、昨年度に引き続き、投資意思決定モデルの精緻化を進めると伴に、これまでの実験から実証的に得られた意思決定モデルと市場価格形成との関係を検証することである。 (l)投資意思決定モデルのさらなる精緻化 昨年度は、より現実の市場環境に近い環境における実験プラットフォームとして、人工市場型Brain Computer Interfaceを作成した。本年度は、このプラットフォームをさらに発展させ、戦略的状況下における意思決定分析(Game理論をベースとした分析)も可能とするとともに、これらのプラットフォームを用いて意思決定と生体反応の関係を分析した。具体的には以下のような結果を得た。 (a)戦略的意思決定モデルについても、生体情報を用いたモデル化を行い、従来モデルの予測精度を改善できることを示した。これについてはEconomic Bulletin誌に発表した。 (b)投資意思決定予測モデルについても、更なる多様化を図り、有望と思われるすべての候補についても比較検討を行った。 (c)また、生体情報の測定手法の多様化(Multi-modality化)、意思決定における個人差を詳しく検証についても分析を行った。(b)(c)については人工知能学会および電気学会において発表した。 (2)代表的なFSFとの整合性の検証 本年度は、効率市場仮説に対するアノマリーの一つとして学術上も実務上も常に大きな関心を集めてきた、短期における正の自己相関の存在と、中長期における負の自己相関の存在について、我々の意思決定モデルとの関係を分析し、我々の限定合理性を加味した意思決定モデルが、これらのアノマリーを再現可能であることを示した。この結果についてはthe IEEE transactions on Evolutionary Computation誌(accepted forthcoming)に発表される。
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