研究概要 |
本研究は、原資産の対数収益率がGARCH過程に従い、尚且つその条件付き分布が正規分布を特殊なケースとして含む非正規分布に従うという仮定の下で、ヨーロピアン・オプション価格を評価するためには、リスク中立確率の下で、元のGARCH過程がどのように表現されるべきかを明らかにすることと、実証分析を用いてその有用性を確かめることを目的とする。昨年度までは、理論モデルの完成に力を注ぎ、既存の研究結果との統合を目指してきたが、本年度は、研究課題の後半部分にあたる実証分析を集中的に行った。 まず、イノベーションの非正規性がオプション価格にもたらす影響を明示的に捉えるために、理論モデルの具体例としてEGB2分布(Exponential Generalized Beta Distribution of the Second)を取り上げ、リスク中立確率の下で、原資産の対数収益率がどのようなGARCH過程に従うかを詳しく示した。EGB2分布は、金融時系列データでよく見られる、正規分布とは異なる歪度や裾野の厚さを記述する上で、大変優れている性質を持っているものの、GARCHオプション価格付けの文脈ではまだ取り入られていないものである。 次に、米国のS&P500株価指数オプションを対象とした実証分析を行った結果、本研究で取り上げているGARCH-EGB2オプション価格付けモデルが、伝統的なGARCH-Normalオプション価格付けモデルより価格付け誤差が小さい、という面からみて前者の有用性が示された。サンプルは、2002年正月から2006年12月までの各水曜目に取引された、261週間のオプションデータである。また、GARCHモデルとしては、Nonlinear GARCH(1,1)-in-meanモデルを採用した。
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