研究概要 |
2011年度は日本の協同組織金融の中核を担う信用金庫を研究対象として,エージェンシー(agency)理論の観点から,依頼人(principal)たる「会員」(株式会社における株主に相当)の代理人(agent)としての理事会のあり方が,信用金庫の収益性や安定性といった経営パフォーマンス,ならびに金庫が立地する地域経済に及ぼす影響を実証的に検証した(ここでいう理事会のあり方とは,理事会の規模,非常勤理事比率,当該金庫出身者,会計士・税理士等の専門職,有力会員としての借入企業経営者等を区別した上での非常勤理事構成などを含む)。そのために,信用金庫の個別財務諸表や理事会の規模・構成を掲載している各種のデータ・ソースから複数年にわたるデータを収集・整理するとともに,市町村合併を明確に考慮した地域景況のデータ・ベース構築を試みた。計量分析を実施するにあたっては,経済学の実証研究で広く用いられている一般的なパネル・データ分析のみならず,サバイバル分析(survival analysis)やクラスター分析(cluster analysis)などを含む,さまざまな統計的手法に依拠した。研究成果については(社)東京都信用金庫協会「中小企業金融研究会」(2012年2月開催)にて報告し,出席した研究者および実務家から詳細なコメントを得た。また,「第5回地域金融コンファランス」(神戸大学,2011年9月開催)に研究分担者および研究協力者を帯同した上で座長として参加し,地域・中小企業金融の最新の研究動向等について,出席した他の研究者との広範な意見交換を行った。
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