研究概要 |
本研究は、(一般に情報を有しない小口あるいは個人)投資家の危険資産への相対的資金流入が投資家センチメントを代理し、組織的リスクファクターとし市場で価格付けされているかどうかリターンクロスセクションの観点で検証することを第一の目的として開始された。その検証は可能な限りミクロ化し日次と,月次そして日米の対比を前提に約2,500の本邦オープン型株式投資信託を対象に、まず投信スタイル別フロー分析を行う。そして、そこから複数のセンチメント=フロー要因を抽出し、全体をを1つのセンチメント・ファクターとして条件付きマルチファクター評価モデルの枠組みの中でセンチメントが価格付けされているかどうかを多面的に実証分析を行った。日次データの使用の下で、3つの有力なセンチメントフローシリーズ(インデックス、マネープール(リスク逃避港)とベアフロー)が導出され、それらに経済的意味付けを行った。これらを基準化した線形結合させることで市場全体のセンチメントファクターを合成し、他の経済ファクターやファーマ=フレンチファクターとは独立した有意なプライスドファクターであることを実証した。 本年度(第3年目)におけるこの日次データでの検証においては、特に「アウトオブサンプル」でセンチメントファクターの価格付けをファーマ=フレンチ3ファクターモデルなどより一般化されたモデルの枠組みにおいても検証することができた。この結果、日米の投信データから同様な投資家センチメントファクターに関する比較検証を行ったBrown, Goetzmann, Hiraki and Watanabe(2003 AFA Washington D.C. Meeting)に存在したモデル選択の不一致を含む諸課題をを克服することができた。日本市場においても、投資家センチメントはファーマ=フレンチファクターあるいは流動性ファクターとも異なったtraded factorを形成することが分かった。このファクターに対する感応度を積極的にモデル化した資産運用モデルの実現がわが国においても今後十分可能であるとの実務への有益な含意を得ることができた。
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