本研究は、デフォルト確率と回収率の同時推計が可能な信用リスク計量化モデルを開発・提案する。 デフォルト確率と回収率(正確には1-回収率)を同時に評価したものを期待損失というが、その客観的な計量化モデルは銀行経営の安定化をもたらすだけでなく、企業の間接金融を円滑にし、また新BIS規制による国際基準に準拠するためにも有効なものであり、現在金融当局や銀行が必要としている。本研究ではデータから乖離しがちな確率論的モデルを用いず、実データをもとにした統計モデルを構築することによってデフォルト確率と回収率の同時推計を可能にする。さらにモデルパラメータの推計のために、地方銀行の融資・回収データおよび信用保証協会連合会の代位弁済データを用いる。特に、デフォルト確率と回収率の相関関係や、回収に数年間を要した場合の処理などに注目し、従来無視されていたリスク要因の計量化を実現する。 昨年度は地方銀行より400万件の回収率キャッシュフローのデータを入手し、回収率モデルのパラメータ推計のためのデータ整備を行った。具体的な作業は、 (1)回収データと財務データの名寄せ作業 (2)回収データと銀行内部格付データの名寄せ作業。 (3)回収データと担保保証データの名寄せ作業。 またこれと平行して、回収率モデルの理論的問題点を整理し、公表した。
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