研究課題
本研究は、商工会議所を事例に、フランス型経済システムが帝国時代から独立時代に至るまで、いかに旧植民地の中で普及し、現地化したり相互交流したりするかを比較分析する。商工会議所は、世界で初めてパリで設立され、その後世界中に普及したフランス起源の中間団体だ。日本商工会議所も、渋沢栄一のフランス視察を契機としている意味では、フランスに起源がある。植民地時代は植民行政府と地元財界の情報交換や諸施策・陳情の窓口となり、独立後の社会主義時代は計画経済に組み込まれ、自由化時代には国際貿易や国際投資の窓口にもなっている。その時代の政府政策と市場経済が交わる経済システムの結節点でもある。本研究では、宗主国の統制の強い北アフリカ、中間的なサハラ以南アフリカ、総督府の現地化が進んだ旧インドシナの3類型を想定する。本年度は北アフリカと旧インドシナを対象に分析した。北アフリカにおいては、チュニジア国立文書館において2度目の訪問交渉によって、チュニス商工会議所の議事録の全巻複写に成功した。旧インドシナにおいては、カンボジア国立文書館および国立図書館において植民地時代の雑誌を収集した。また、ベトナムのホーチミン商工会議所では、ベトナム共和国時代(1975年以前)からの唯一の生き残りであるNguyen Duy Le前副会頭にインタビューした。ラオスでは、チャンパサック商工会議所のBounlap初代会頭にインタビューした。彼は、ラオス王国時代にチャンパサック商工会議所を設立後、国会議員、商務副大臣を歴任し、ラオス社会主義共和国時代は共産党支援者として地方政権交代を担って生き残り、経済自由化時代には商工会議所会頭に返り咲いた。ラオス語の自伝を英訳した上で、聞き取りで補填と資料批判を行い、王国時代の欧州政治家や王室、社会主義時代の各国共産党幹部の写真を複写した。その成果の一部はディスカッションペーパーにまとめた。
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Discussion Paper, Graduate School of Economics and Business Administration, Hokkaido University Series A, No.214
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