研究課題
本研究は、フランス型経済システムが帝国時代から独立時代に至るまで、いかに旧植民地の中で普及し、現地化または相互交流するかを比較分析した。商工会議所や国策会社は、各時代の政府政策と市場経済が交わる経済システムの「交錯」点だ。植民地時代は行政府と地元財界の情報交換の窓口となり、独立・社会主義時代は計画経済に組み込まれ、自由化時代には国際貿易の窓口になった。本研究では、宗主国の統制の強い北アフリカ、中間的なサハラ以南アフリカ、現地化が進んだ旧インドシナの3類型を想定する。本年度は後2者を対象にした。旧仏印では、旧仏・広州湾租借地で湛江師範学院・湛江博物館・広州湾法国公使署旧址にて仏中語史料、旧仏・上海租界で上海市档案館外灘新館にて仏英中語古書、旧仏・填越鉄道の中越国境では中国語図書、仏印ではベトナム国家大学ホーチミン校の支援で同図書館の英仏語図書の収集に成功した。アフリカのマダガスカルでは、2008年の史料発見後、2009年のクーデター後に渡航不能となったが、国立文書館長・商工会議所事務局長・アンタナナリボ大学および同国出身門下生の支援により、再度の史料収集に成功した。またコンゴは、反政府軍戦闘で渡航不能となったが、同国出身門下生を派遣し、Gecamines社とSodimico社の史料収集に成功した。仏領インドシナは現在の中国領土において、広州湾租借地・上海仏租界・填越(雲南省=仏印)縦断鉄道の支配により、雲南省植民化・広州湾「香港」化を狙った。本研究では戦後に中国政府にほぼ抹消され研究も少ない中国側・仏領租借地の「失われた交錯史」を復元し、現在も仏印鉄道が使用されるベトナム側との対比を判明した。また、マダガスカル研究とコンゴ研究は、幣研究室で指導する両国出身者の修士論文に結実し、両国財界・学界への寄贈・交流と同時に、北海道発の地域経済史家育成に貢献した。
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Master's Thesis, Graduate School of Economics, Hokkaido University
巻: 1 ページ: 1-166
巻: 1 ページ: 1-77