19世紀の北西ドイツの農村ゲマインデ制度の展開について、同時代文献・史料の収集を踏まえて、農村ゲマインデ法制を中心に検討した。結果として、ゲマインデの性格を集約的に示すと考えられる政治参加資格がドイツ各地の農村ゲマインデ法において19世紀中頃以降家屋・土地保有要件から乖離して拡大しつつ不平等化していったこと、そこにおいて北西ドイツ諸領邦は典型的な動向を示し、その中でHannover王国のゲマインデ法制は代表的な位置を占めたことが明らかになった。そして、Hannoverにおいて政治参加資格の拡大を不平等化とともに実現した1852年法の成立事情が解明され、この立法の影響について、主に1850年代、追跡的に1870年代のゲマインデ規約類からみて、政治参加資格の拡大と不平等化は必ずしも立法者の意図通りには進まなかったことが明らかになった。 また、農村の地域組織の史料的調査準備として、主に北海沿岸地方について、Hamburg大学図書館・Kiel大学図書館・Hannover州立図書館・Aurich地方協会図書館でゲマインデ組織・堤防組織・広域自治組織などに関する地方史雑誌文献・同時代文献・未公刊博士論文、地域家族史料を探索・調査した。そして、Schleswig・Stade・Aurichの州立文書館とCuxhaven市立文書館で史料、特にゲマインデ組織関係文書を中心に、堤防組織史料などをも探索・調査した。それらの結果、ゲマインデ組織について、一部地域を除き成員資格・役職制の概要、一部地域で政府の制度調査記録・慣習法調査記録などが存在すること、他方地域家族史料は地域的に偏在して作成され、堤防組織成員の範囲を示す堤防記録簿が通常存在するが連年作成されたわけではなかったことなどがわかった。
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