研究概要 |
本研究は,ロンドンとニューヨークにおける国際金融センターの形成を比較史的な視点から考察し,マクロ経済的な統計データとミクロ経済的なデータとなる金融機関の経営文書を組み合わせて総合的に利用することで,国際的な金融センターが形成されるメカニズムを導出するところに課題がある。平成21年度においては,以下に述べる研究活動を実施し,研究課題に関する知見を得ることができた。1.ユトリヒト大学において開催された第15回国際経済史会議XV^<th> World Economic History Congressにおいて国際銀行業に関するパネルを組織し,19世紀の最有力国際銀行であったにもかかわらず,これまで研究が進展していなかった東洋銀行Oriental Bank Corporationのロンドン金融市場および現地における営業活動に関する研究報告を行い,海外研究者と意見を交換した。この研究成果は,Oxford University Pressから出版される著作に取り入れられる。2.ロンドンに先立ち,18世紀の覇権的な国際金融センターとなったアムステルダム金融市場に関するリサーチを行った。同市市公文書館に於いて,国際金融業者ホープ商会Hope en Co.の外債発行活動に関する経営文書を収集・分析し,ネットワークの重要性に関する知見を得た。3.戦間期のニューヨーク金融市場の国際化に関して,モルガン商会J.P. Morganの文書を調査し,同商会が関与した第一次世界大戦関連の公債発行を調査した。これにより,同商会の戦時金融活動を具体的に解明することができた。4.コロンビア大学図書館に所蔵されているシティ銀行National City Bank頭取ヴァンダーリップF.A. Vanderlipの文書を調査し,同行が国内銀行業務から国際業務に転換する経営戦略の実態を明らかにした。
|