研究概要 |
本研究の目的は、「在来的経済発展」論から日本の経済発展の類型的な特質を展望し、あわせて労働集約型工業化論など、近年のアジアの経済発展の特質をめぐる諸研究に対しても、新たな含意を加えることである。2010年度は、都市小工業の事例として取上げた玩具工業に関して、国内の業界団体で業界雑誌の収集(写真撮影)を行った。一方、在来的経済発展と日本的労務管理の関連に関しては、昨年度から継続して、労務管理に関する経営史料にアクセスし、資料の整理・複写を行なっている。また労働市場の構造の考察に関する、農村-都市間労働移動の実証的な検討作業の成果を、2010年9月に、国際学会(Rural History Conference 2010、University of Sussex, U.K.)で報告した。在来的経済発展の基盤の一つとして「家族労働」に着目するのが本研究の独自な視点の一つであるが、この点については、2010年6月に社会政策学会でジェンダー史と労働史の複合的な視角から報告を行い、また女性の労働供給を規定する「家事労働需要」について、農家経済調査の計量的な分析にも着手した。その成果の一端については、2010年7月にLondon School of Economicsで開催された国際ワークショップで報告した。
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