研究課題/領域番号 |
21530333
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
谷本 雅之 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (10197535)
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キーワード | 在来的経済発展 / 小経営 / 家族労働 / 世帯経済 / 都市小工業 / 玩具工業 / 中小企業 / 労働集約的工業化論 |
研究概要 |
本研究の目的は、「在来的経済発展」論から日本の経済発展の類型的な特質を展望し、あわせて労働集約型工業化論など、近年のアジアの経済発展の特質をめぐる諸研究に対しても、新たな含意を加えることである。当該年度は、これまで手がけてきた産業史および労働史の視角に加え、都市社会史および消費史の視角による分析を行った。具体的には、東京の戦間期における社会関係の形成に、都市小経営がどのように関わったのかを、「公共性」をキーワードに検討した。国勢調査等の住民データの分析による住民構成の特質と、社会組織-町内会・同業者団体-との固有な結びつきを明らかにし、都市小経営の存在が、日本の都市の固有な社会関係の形成に寄与したことを論じている。また、昨年度から引き続き、小経営世帯の消費行動を家事労働供給の分析を通じて検討し、世帯固有の労働供給と消費史の接点に関する議論を深めた。農家経済調査データの計量分析に加え、家事使用人に関する府県クロスセクション分析なども試み、世帯構造と家事労働の関連を追求している。また、家事使用人に関しては、イギリスとの比較も手がけ、両者の家事使用人比率の顕著な相違を見出した。日本と西欧における、家事労働供給者の相違を浮かび上がらせる事実であり、今後の研究の手がかりの発見といえよう。このように、いずれの点も、在来的経済発展の特質を論ずる上で、産業史・労働史的なアプローチからは得られなかった知見であり、「在来的経済発展」論の豊富化を可能にする論点の析出と考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際学会を含む4つの学会で、研究テーマに関わる報告を行い、様々なフィードバックを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
都市小工業の国際比較に関して、外国史の専門家による助言を得る見通しがついたので、これまで収集した資料の分析を行う。また、戦間期および戦後の東京玩具工業史に関する産業論的な検討に着手し、これまでの研究成果との補完を図る。
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