1、日本行政府(中央・地方)の社会経済政策の立案と実施に関わる、文書記録等の保存と管理の実態について調査した。平成21年度に対象としたのは、国立公文書館(平成21年4月14日)、大阪市公文書館(同6月5日)、大阪府公文書館(同6月5日)、神奈川県公文書館(同7月7日)、日本銀行金融研究所アーカイヴ(同11月16日)、沖縄県公文書館(平成22年3月5日)、山口県文書館(同3月19日)、及び北九州市立自然史・歴史博物館(同3月20日)の8文書館であった。 調査の結果、(1)政策立案の段階から歴史資料としてのあり得べき価値を判定してその保存方法を配慮することが好ましい、(2)文書等は、現用期間経過後に「中間書庫」に移転し、その保存期間終了後は歴史文書として公文書に収録するか否かの判定をアーキヴィスト(歴史文書司書)の判断に委ねるのがよい、(3)上記の作業の国民的価値に鑑み、アーキヴィスト養成とその公的資格の認定を推進する必要がある、との認識を得た。 2、韓国における公文書管理と保存の実態を、韓国国立記録院並びにソウル大学付属図書館を訪問して調査し、その方法論的基礎の確かさと制度的・予算的裏付けの豊かさから多くの知見を得た。また、アメリカ合衆国における公文書管理の歴史的経緯と実情について、同国公文書館(National Archives and Re-cords Administration、略称NARA)元館員から聴取し、同館の基本的方法はファイルによる整理であること、これに対して日本の文書管理たる簿冊方式には、米国方式が持たない長所もあること等を認識した。 他国の経験と現状に照らして鑑みても、日本社会の公文書管理・保存活動の価値の正しい認識を深め、かつその任にあたる専門家たちの社会的地位を向上させることは喫緊の課題である。
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