研究概要 |
本研究は、総合商社伊藤忠商事・丸紅両社の創業家である伊藤忠兵衛家伝来文書の整理・目録作成の作業を進めるとともに、関連史料の収集と重要史料のマイクロ撮影を行い、一般公開するための環境を整えることに目的があった。 伊藤忠兵衛家文書は、2003年夏に発見されたもので、これまで両社社史の編集時にも閲覧された痕跡がなく、当然ながら学界未知の史料であり、公開の暁には戦前期日本商社史、流通貿易史の通説を大幅に書き替える可能性を秘めたものだといえる。 研究期間中には、約37,000点までの史料整理・仮目録の作成を終えた。しかし、20,000点ほど未整理のまま残されており、引き続いて作業を進めている。また、同期間中に伊藤忠商事・丸紅両社が社内で保管してきた資料も滋賀大学経済学部附属史料館に寄託され、整理・仮目録の作成を終えた。 この作業と併行して、初代伊藤忠兵衛が最初に対米雑貨貿易の支店を構えたサンフランシスコに資料調査に赴き、同地の公立図書館にて関連資料・文献を収集し、当該店(日本雑貨貿易商会、のち伊藤外海組)の正確な所在地と入居していたビル、建物平面図などの資料を入手した。これにより、明治18年に伊藤外海組が設立されたとする従来の定説は誤りであることが証明できた。 また、今後の研究の進展に備えて、初代伊藤忠兵衛について語った文献を収集・編集し、一冊の書籍にまとめた。これは平成24年度内に出版される予定である。すでに原稿は、出版社に入稿済みである。 しかし、本家である伊藤長兵衛家が韓国全羅北道全州参礼で経営していた伊藤農場関係資料の調査・資料収集は、上記の作業・調査が繁忙であったため実現することはできず、今後の課題として残された。
|