研究課題
研究課題の「研究の目的」である近世農村における奉公人から賃銀労働者家族へという移行過程の制度的な側面として、最近英米の学会で注目されている徒弟法と救貧法に着目し比較的資料の豊富な都市の側からこの時期の奉公人のおかれている状況を考察した。この考察によって新たに明らかになった点の一つは、従来から着目されている農業類型の相違が、都市における出身徒弟の立場さらに結果的に農村への技術移転の可能性の相違に帰結することである。具体的には、混合農業地域出身の徒弟は都市で徒弟法に基づく登録をされ、そのまま市民として都市に残留するのに対して、牧畜地域の出身の徒弟は徒弟登録をされることがなく、しばしば登録の強化の際帰省し結果的に農村に技術移転をする担い手となることであった。こうした経緯は、牧畜地域の工業生産者家族としての自立の可能性を意味しており、この地域における賃銀労働者家族の出現の遅れの一因を解明したことになろう。農村自体に関しては、引き続きデータベースの作成を続けた。奉公人の盛衰との関連で論争となっている「10月結婚」のトレンドを見るために、グロスタシャの17世紀の教区簿冊の結婚税の記録のデータベースを完成させるとともに、階層差を見るための結婚許可状のデータベース化と分析を進めた。これらの分析結果の論文化は次年度に持ち越すことにした。しかし、現時点までに、「10月結婚」のトレンドの農業類型による差異などは予備的分析によって判明している。研究実施計画に組み込まれていた英文論文の作成も、作成自体は行ったが、公刊はやはり次年度に持ち越されることになった。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (2件)
研究論叢 (首都大OU)
巻: 5 ページ: 1-49
Research Paper Series (Graduate School of Social Sciences, Tokyo Metropolitan University), No75, (pp.1-32)
巻: 75 ページ: 1-32